2015/04/29

「ディオールと私」

先日、「ディオールと私」を観てきました。


映画「ディオールと私」公式サイト







先日「パリよ、永遠に」を観た渋谷のBunkamuraル・シネマで上演中だったので、気になって行ってきました。
これ、ドキュメンタリーなんです。
2012年。クリスチャン・ディオールの新しいデザイナーに起用されたのは、ジル・サンダーと彼自身の男性ブランドで活躍しているラフ・シモンズでした。
ラフはプレタポルテ(既製服)の経験しかなく、オートクチュールの経験がないにも関わらず、8週間でパリ・コレクションに間に合わせなくてはなりませんでした。
それも、54体も!!

ラフはベルギー出身で、フランス語がまだあまり上手く話せません。
ラフの右腕であるピーターがフランス語に堪能なので、言葉などの問題をフォローしつつ、ラフがかなり無茶を言ったファブリックデザインの要望をアトリエのスタッフがどうにかこうにか再現したり、みんなで手分けして徹夜でビーズ刺繍の手直しをしたり、コレクション会場の装飾もかなり無茶なことを言ってたにもかかわらずラフの希望を叶えるべく東奔西走するスタッフ達。

私はあまり予習しないで観たので、『これはドキュメンタリー仕立てのフィクション作品だったっけ?』と何度も思いました。
だって。ディオールの伝統を長年守ってきた各部門の専門家たちが、オートクチュール経験がない、フランス語で会話しきれないデザイナーが来ただけでもムカつくと思うのに、そんな彼の無茶な要望を叶えるべくガリガリ動いてなんとかしたり、顧客優先で急きょ出張に行ったらむっちゃ怒られたり。
こんな目に遭ってもラフを信頼して頑張る皆さん。
なんでこんなにサラッとしてるの??
「とんでもなく大変よ!でもなんとかしたいし、できたらステキだもの。彼を信用しているわ。だからやるの。(超意訳)」
と笑い飛ばしながら言い切る方々が、演技ではなく本人達だなんて!!

私はファッション業界のことは全然わからないのですが、2012年のディオールのコレクションを知っている人にはこの映画は相当な衝撃だったみたいです。

私自身、ファッションショーの仕事はあまり受けないようにしているのですが、会場設営の現場はまさに戦場です。
私たちはライティングだけなんとかすればいいのですが、バックヤードでのヘアメイクさん達と、ファッションショーの場合何て言うんだろう、衣裳さんと言うか着付けさんと言うか。本当に戦場です。一瞬でも邪魔したら踏みつぶされるであろうくらい闘ってます。
モデルさんもかなりヘロヘロになってます。バックヤードでモデルさんバストトップ露出は普通です。女同士だと「あ、見ちゃった。」程度ですが、ショーのテクニカルスタッフの男性はアワアワしちゃってます。

わたし、自分がオートクチュールでドレスを作ることは一生ないと思うのですが、オートクチュールのコレクションをアートの一部と考えたら、私たちのような舞台の裏方が持ってる『無茶言われても限界まで対策を考える』プロ意識みたいなものが、私自身よりもディオールのメゾンの皆様の方が数段上だなと感じました。
わたしは、ぜんぜん甘い!!

そして、なんか笑っちゃったのは。
コレクションをバックヤードに設置されたモニタで見てるメゾンのスタッフの皆様の服装の適当なこと!!
メゾン内での作業服は、グレーの糸でDiorの刺繍の入った白衣のようなものらしいです。
コレクションの日はメゾンでの仕事ではないのでみなさん私服でいらしてますが、まー。
タンクトップとか、テキトーな服装の方々ばかり!!
ディオールでドレス作ってるからって、自分が普段ドレス着てるわけではないんだね!
そらそーだよね!!
そのギャップも、ドキュメンタリーならではの面白さかもしれません。

やっぱり、世界最先端にいる方々は、スタッフのメンタリティーの強さもとんでもないんだなあと感じました。

そしてそして、メインで追っかけられたラフ・シモンズは、すごいカメラ嫌いなんですって。映画の中でも言ってますが。
Diorのメゾンにカメラを入らせてもらっただけでもすごいのに、カメラ嫌いのラフの、あんなに自然体(っぽく見える)でむっちゃダメ出ししたりむっちゃ「このデザインのファブリックでドレス作りたいの!譲れないの!むぎゃ〜!」みたいなところを撮影できたのは、撮影隊がラフからの信頼を得たからなんだと思います。

ファッションに興味がある人はもちろん、ラフ達とスタッフ達のストイックさと、短期間で彼らの間に構築された信頼関係に感動です。
是非観ていただきたい作品です。

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